タバコ自動販売機の問題点

 タバコ自動販売機(以下自販機)は未成年者がタバコを入手できる第一の機械であり、補導・非行の要因となっている。また大人にとっても利便性が高く、その広告塔的アピールや便宜供与は禁煙を阻害する大きな存在となっている。成人識別カードの導入が勧められているが、根本的解決にならず新たな社会的問題となろう。

 自販機の設置台数は、1975年は22万余台で、2000年の62万余台までほぼ直線的に伸び、2005年からは横ばいとなっている。売上金額も比例して増加し総販売金額の約49%を占めている1)。このおびただしい自販機の設置は全国津々浦々に展開され、世界に類を見ない自販機超大国となっている。
 昨今、喫煙開始年齢の低年齢化が知られている。中学・高校生は言うに及ばず、小学生もところによっては約30%の経験率と言われ、児童・生徒への広がりに歯止めがかかっていない2)。

1、自販機の第一の問題 青少年の非行への入り口
 子どもや未成年者にとっても便利のいい入手先となっている。タバコの入手経路は、2001年の厚労省の調査では、高3男子の76%、高3女子の52%が自販機からとなっている。同年の警察庁の調査でも、刑法犯を犯した中学生では半数以上に喫煙経験があり、タバコの入手先は約7割が自販機からである。種子島署も95%が自販機からと指摘している。愛媛県の17年度の某警察署少年課の報告は約9割であり、自販機は少年非行とも強く結びついている。
 クリントン前米大統領は1996年に、7年間で未成年者の喫煙率半減を目指し対策を講じたが、その中に「未成年者が出入りする場所からの自販機の撤去」がある。自販機は未成年者の心身を蝕む不要な機械として世界保健機関(WHO)や、医学会等は自販機の撤廃や規制を主張している3)。
2、第二の問題 違法設置
 タバコ事業法は未成年者喫煙防止の観点から、(1)販売機を店舗に併設する、(2)販売機および購入者を容易に視認できることを設置許可の条件としている4)。財務省は平成17年3月に、視認できない自販機をなくす方針を明らかにした。従わない場合は販売許可を取り消すとのことである。併設については平成元年以降のものが対象であり、それ以前の約29万台は「野放し」のままとなる。視認についても言い逃れのできるものがほとんどであり、店員に周知されていないことも大きな問題である。
3、第三の問題 年齢確認のためのICカードの導入
 日本たばこ協会は2008年稼働を目標に、全ての自販機に年齢識別ICカードによる成人識別機能導入の準備を進めている。自販機すべてを対象にする。2005年2月発効の「タバコ規制枠組み条約」によって、未成年者の喫煙防止対策の徹底が義務付けられたことに対応するためである。それに先立ち種子島では、2004年5月から導入検証のため稼働している。利用者は所定の力ード申込書に、生年月日が確認できる書類と顔写真を添えて同協会に郵送する。送られてきたカードを識別装置にかざし、現金か力ードのプリペイド機能で購入する仕組みとなっている。
 しかし、未成年者も大人のICカードを借りるか不法入手して買うことができる。これに伴う違法行為・犯罪の温床化が新たな社会問題となろう。警察庁も、自販機による販売は年齢確認を確実に行うことができないことから、販売方法としては適当ではないと考えている5)。対面による販売と同等以上の効果は期待できない。より厳格な識別には指紋識別機能を付加させる必要がある。
4、第4の問題 カラフルな絵による広告
 自販機に目を引く巧みな絵を付加し、夜はネオンできらびやかに誇示している。毒性を隠す誘惑的キャッチフレーズもこと欠かない。タバコ広告禁止に抵触すると考えられるが、自販機については該当しないと解釈されている。現実的には広告塔的存在であり不当ではないか。
 
 このように自販機は喫煙する大人の利便性や業界の利益のためにあり、未成年者にとって不要のものである。彼等の非行・犯罪・病気から守ることを真剣に考え、大人の利便性や業界の利益の犠牲はやむを得ない、また、誘惑的広告塔でもある自販機は撤廃、という世論づくりが必要である。

索引
1)健康ネット
たばこと健康 厚生労働省の最新たばこ情報HP
自動販売機
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd040000.html
未成年の喫煙
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd110000.html

2) 第6回たばこ事業等審議会懇談会(1999年3月11日)
3)日本小児科医会(1999年)、日本肺がん学会(2000年)、日本循環器学会(2002)
4)新設の未成年者喫煙禁止法4条(2001年)
5)財政制度等審議会 第8回たばこ事業等分科会(2004年6月28日)

付記
1、朝日新聞 平成18年3月31日
2008年6月末までに成人識別機能を有した自販機の整備を完了する。
2008年3月に鹿児島、宮崎の両県で試験的に導入。
5月には北海道、東北、中国、四国、九州、6月に北陸、
東海、近畿、7月に関東で稼働をはじめる。
購入に必要なICカードは平成19年後半から成人を対象に無料で発行する予定

2、たばこ事業法施行規則
(営業所の位置が不適当な場合)
第二十条
法第二十三条[許可の基準]第三号に規定する営業所の位置が製造たばこの小売販売を業として行うのに不適当である場合として大蔵省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
3 自動販売機の設置場所が、店舗に併設されていない場所等製造たばこの販売について未成年者 喫煙防止の観点から十分な管理、監督が期し難いと認められる場所である場合

3、年齢確認とは似て非なる法改正
 平成13年二〇〇一年新設の未成年者喫煙禁止法四条は「煙草又ハ器具ヲ販売スル者ハ満二十年ニ至ラザル者ノ喫煙ノ防止ニ資スル為年齢ノ確認其ノ他ノ必要ナル措置ヲ講ズルモノトス。」と定めている。罰則のない訓示規定であり「ザル法」。最近市内を見回った限りではほとんどが視認が困難、または不可能な状態にあり違法設置となっている。また、従業員のほとんどがこの法律を知らないことも明らかになった。自販機の設置者は、未成年が自用に供する可能性があることを知りつつ設置している可能性があるのではないか?

4、神奈川県の松沢成文知事は平成18年2月22日、未成年の飲酒や喫煙を防ぐため、自動販売機への成人識別機能設置を販売者に義務付ける条例を定める方針を明らかにした。制定されれば全国初といい、2007年の施行を目指す。

5、イタリア たばこ自販機を規制(平成16年)
 自販機が急速に普及し、タバコが簡単に入手できるようになってからは、未成年者の喫煙は大きな社会問題となっている。13歳で既に2人に1人は喫煙経験があり、15歳では3分の1が定期的に喫煙しているという。政府は自動販売機に規制をかけることを決定した。平成16年1月から自販機の稼働を7時から23時までとし、タバコ購入にはマイクロチップ付き身分証明書を差し込み、購入者が17歳以上であることを機械に確認させるようにした。

6、自動販売機の設置等に関する条例
青森県深浦町「深浦町自動販売機の適正な設置及び管理に関する条例(平成13年4月)」は、「自販機を屋外に設置してはならない」とし、屋外にある自販機を180日以内に撤去するよう求めた。罰則はなく勧告であり、撤去費用などの一部を助成するとなっている。しかし販売店の抵抗が大きく一部は応じているが初期の目的を達していない。

7、自販機、購入者が見える場所に 未成年喫煙防止へ財務省
財務省は平成17年3月29日、未成年の喫煙を防ぐため、買う人が確認できない場所にある自販機をなくす方針を明らかにした。こうした自販機は全国に数万台あるとみられるが、まず来年度から、調査で判明した8千台について、自販機を管理する店側に本人確認ができるようにすることを求める。従わない場合は販売許可を取り消す。
 財務省によると、規制が強化された89年6月以前(平成元年)の自販機は、店員が購入者の顔を確認できる店舗の併設が義務づけられていない。こうした自販機は29万台で、事実上規制の網からはずれた状態にあるという。

8、タバコ自販機規制全国に拡大、成人識別機能も準備進む (2006年8月13日0時34分  読売新聞) 
 未成年者の喫煙防止対策を強化するため、財務省はタバコの自動販売機の設置規制の対象地域を県庁所在地から全国に拡大する方針を固め、各地の販売店への指導を開始した。
 店員の目が届きにくい自動販売機の撤去や場所の変更などを求めている。
 一方、タバコメーカー3社で作る日本タバコ協会も今月から、タバコ店を対象に、2008年3〜7月にかけて全国で導入される「成人識別機能付きタバコ自動販売機」の登録手続きを始めており、官民挙げて未成年者の喫煙防止に乗り出す。
 財務省が規制を強化するのは、タバコ自販機の店舗への併設が義務づけられた1989年6月以前に設置された約29万台が対象だ。昨年から、主に県庁所在地にある約7900台を対象に、店員が目で買い手を確認できる位置に置くように文書指導してきたが、この夏からは、指導エリアを全国に広げた。
 一方、「成人識別機能付きタバコ自動販売機」は、同協会が発行する専用のIC(集積回路)カードがないと、利用できない仕組みだ。全国すべてのタバコ自販機を対象としており、各自販機をオンラインで結んで、紛失などで失効したカードの利用を防ぐ。