転移性脳腫瘍
基本的事項
癌患者さんの生存期間延長とともに脳転移症例は増加します。転移性脳腫瘍は,もはや根治的治療を望めない病態です。従って患者さん個人個人の病態をよく見極め,適切な治療計画を立て,たとえわずかな患者さんでも,脳転移腫瘍の局所制御を行い,「質の」高い寛解期を得るために努力することが肝心でしょう。
- 原発巣(元々の癌の発生した場所)
全国集計(脳神経外科治療対象)では
1位 肺癌 (50.0%)
2位 乳癌 (11.5%)
3位 消化器癌(10.3%)
4位 頭頚部癌 (4.7%)
5位 腎・膀胱癌 (4.7%)
6位 子宮癌 (4.1%)
- 性別では,男性が約60%とやや多い。
- 年齢では,いわゆる癌年齢に多く,50から70歳で約60%を占める。
- 部位では,テント上(大脳と小脳を堺している硬膜より上方)に80%が発育する。
頭頂葉が最も多く前頭葉がそれに続く。血行性転移(血流に乗ってガン細胞が飛んでくる)のため,脳内で最も潅流領域の広い中大脳動脈領域に多い。
テント下には20%しか転移を見ないが,その内約90%が小脳である。
症状
頭蓋内圧亢進症状と転移巣の存在する部位の局所症状が見られます。多発性転移の場合には複雑な神経症状を呈するので注意が必要です。最近では肺癌症例全例にスクリーニング検査として脳CTスキャンを実施することが多くなり,そのため無症状の脳転移症例が増加してきました。原発巣治療から脳転移診断までの平均時間は肺癌で7カ月,乳癌では40から60カ月です。
診断
肺癌の場合には脳が唯一の転移巣である場合があります。極端な場合には脳転移巣が先に診断され,後に原発癌として肺癌が診断されることがあります。
画像診断
単純CT:約半数が低吸収領域(low density
mass :黒く写ります)を,残り半数が等〜高吸収領域(iso-〜high sensity mass:白く写ります)を示します。
造影CT:ほぼ全例で強い増強効果を示し,円形の腫瘍として描出されます。中心壊死巣を伴うことが多いようです。腫瘍の周辺の浮腫は腫瘍本体の大きさに比して広いのが一般的ですが,全く周辺の浮腫が見られない症例もあるので注意を要します。
MRI:CTで診断し得ないような小転移巣の診断には造影MRIが不可欠でしょう。
治療
転移性脳腫瘍の治療の目的は,最小の侵襲で患者さんの延命をはかってあげることです。最も頻度の高い肺癌脳転移の治療の歴史を見てみると,肉体的,精神的苦痛の加わる手術摘出を敢えて行わないで,放射線治療のみで症状軽減,延命を図る方針が説得力を持ち,症状改善率70%以上の実績を示しました。しかし,放射線治療のみでは局所再発率の高いことも同時に判明し,手術適応の再検討と術後放射線治療併用が採用された結果,原発巣再発が無く脳以外に転移を認めない症例では1年以上の生存も困難でなく,5年以上の長期生存の報告も見られました。限られた症例ではあるけれど脳転移の局所制御が可能となってきました。
積極的治療対象群:単発転移巣および多発性転移巣でも1回もしくは短期間内の2回の開頭で全転移巣を摘出する場合や,1個の転移巣が大きく他の転移巣が小さく後者を放射線治療で増殖抑制可能と判断した症例です。
放射線照射は,全脳に30Gy,局所に20Gyが標準です。多発性転移には全脳に40〜50Gy照射します。
ガンマナイフ:最近では,ガンマナイフによる放射線治療が行われるようになっています。ただし,どこででも行うというわけには行きませんし適応も患者さん個人個人で決めていく必要があるでしょう。
症例
