作文その1
マゴチ
日本記録を釣って
T・クラブ 高橋滋
「ああ神様、仏様、西ヤン様。1秒でも早く無事タモに納まりますように。」
こんなに真剣に祈ったのは、たしか2年前CR花満開で、9万3千円目に来た7のスーパーリーチの時以来である。
当日、西ヤンこと西崎利勝氏の愛車がやって来た。が西ヤンは闇と同化し何処に居るのかわからない。
もし全日本サーフ黒ん坊大会が開催されれば優勝間違いなし。審査員が頭を下げる程の強者である。
私は3位入賞程度か。
海防とゆう立場から危険防止の為、西ヤンの鼻の穴にケミホタルを挿してあげる。お礼に鈴をオデコに付けて
もらった。今まで最高の釣果だった時と同じパンツをはき、いざ出発。
1分前に到着しドキドキしながらクジをひく。17番。メンバーの顔色は?まあ良である。西ヤンの顔色は?
さっぱり見えない。ホタルをさがす。
キスのポイントを1ヶ所も知らない私に、いきなり27cmなんてゆうキスやベラが釣れる程甘くない事は、31才。
もうしっている。西田ひかるから、「今すぐ来て。」と、愛の告白をされる様なものだ。他魚狙いで下灘へ。
ただなんとなく到着したのは、道流突堤。初めての釣り場なので期待と不安が交じり合う。
三脚をセットしたところで、「ぎょっ。」フグの山だ。計12匹。まだピカピカのツヤツヤで陸に上がって間もない様子。
嫌な予感どうり、【エサ取り警報発令中。】3分と保たない。時が経つにつれ不安になるが、エロ本も無いので
暇をもて余す。朝マズメに期待しよう。西ヤンはまだまだ見えない。が、ホタルが闇に浮かんでる。
薄明るくなった頃、潮が動きはじめた。その時アタリが。西ヤンはまだ見えない。大きくアワセをいれると魚は居る。
首も振っている。「抜ける。抜ける。タモいらん。」ホタルが揺れてしゃべってる。無事、タモに納まり、
50cm強のマゴチで坊主クリア。7時頃から遠投の竿だけは、【エサ取り注意報】に変わり、西ヤンの顔も
見えだした。でも真っ黒だ。そして怖い。しかし目だけは本当に可愛い。松たか子のようである。そう思ってる時、
1番遠投していたボケに、ブルブルッと小さなアタリ。竿尻が浮き上がるのを期待して待つが、それっきり。我慢も
限界に達しゆっくりサビいてみたが、オモリが動かない。「根掛かりか」とガッカリした途端、竿先がグーンと絞りこま
れる。魚と確信し、親のかたき級大アワセをするが、ビクともしない。いつもは「ヒトデ、ヒトデ」「ゴミ、ゴミ」と、
からかう西ヤンも真剣な眼差しで私を見つめる。本当に可愛い目だ。思わず『ぽーっ。』、そんな余裕は今は無い。
強烈なこの手応えは、そこらのチヌやタコ壷じゃない。走る様子も無いのでスズキや空缶じゃ無い。マゴチや、瓦は
ここまで絞り込まん。「バレるなよ。」と何度も念じながら絞り込みに耐え、力糸近くまで寄って来た時、捨て石に
強烈に潜りこもうとする。そうなればもう取れない。強引に巻き上げた。『ガバッ。』と、大きな大きな口を
左右に振っている。思わずファスナーを降ろした。「西ヤン頼むよ!。ああ神様仏様。」日頃の信心不足のせいか、
その祈りはなかなか通じない。今日に限って数珠も線香もロウソクも無い。いつもは『1発タモすくいスーパー
スペシャリスト』の西ヤンだが、この重大な場面において、まるで3才の子供の金魚すくいの様である。タモが反対
だ。腰も引けている。息も荒い。ホタルを抜いてあげた。取り損なう度に沖に走るは、底に潜るは。出したり巻いた
りの繰り返し。「こんな小さなタモ持ってくるけんよ・ボロいのう。」ブツブツ言っている。こっちは気が気でない。
このままでは、『4発タモばらしウルトラスペシャリスト』になるところだった西ヤンだが、5発目にやっとその豪腕を
見せてくれた。鼻が5cmのびている。陸に上げるとなおデカい。本当に感心しながら、「西ヤンの69は抜いとろ。」
「だいぶやられとらい。」そんな会話の後、検寸。その前にシメとかないかん。今までマゴチには何度も指ヤラれと
る。先週は≪黄金のムーンサルトバイブレーション右中指≫が使えず、嫁さんに怒られた。きっちり成仏していただ
いた後、いざ検寸。「うそやろ!七十だいぶ超えとるでー。」「73・9。大マゴチじゃ。」デカい、デカいを連発しながら
クーラーへ。氷もたっぷり入れて来た。(頭とカマはあら炊きで・・・尻尾と腹のあたりを刺し身にして・・・卵もでかそ
うや・・・シメシメ)一人微笑んでるその時、西ヤン大声で「に、日本記録やげー!なんでシメるんどー!バカやのー
。なんの為にイグロまで持ってきとんどー。活かしとかんかー。水、水、水汲め。はよ水汲まんかー。」
おわり
今回は超スーパーウルトラチョベリグ大幸運に恵まれました。大会関係者の皆様、事務局、審査部、
編集部の皆様、ならびにダイシン様、魚拓作成に協力してくださった皆様、最後に、なりましたが、西ヤン、本当に
ありがとうございました。
(’97潮路No28より、抜粋)注1:当時クラブ名は、現クラブの前身のT−clubとゆう名称でした。
注2:この作文は、第28回愛媛県協会キス釣り大会(H9.6.8)にての出来事です。作文内容に、幾分かの
時代遅れの表記があることは、気にせず読んで下さい。当日30位以内に入った、我がクラブの会員は居なかったとさ。